施設デザイン系

施設デザイン系の研究活動

 本学科の施設デザイン系は、「コンクリート材料研究室」「鋼構造研究室」「構造解析研究室」の3研究室で構成されており、鋼構造学、メンテナンス工学、コンクリート材料学、構造物診断技術などの研究分野で、それぞれ最先端の研究を行っています。

 本学科の4年生は、全10研究室のいずれかの研究室に配属され、それぞれの研究室の教職員および大学院生とともに、大学4年間の集大成である「卒業研究」に着手します。卒業研究の成果は「卒業論文」としてまとめられ、毎年2月に行われる卒業論文審査会において、研究成果に関するプレゼンテーションおよび審査が行われます。また、特に優れた研究成果は、土木学会などの学協会が主催する対外的な学会で国内外に公表されています。

コンクリート材料研究室

溝渕 利明(Toshiaki MIZOBUCHI)教授 博士(工学)

■専門分野:コンクリート材料学、構造物診断技術
■担当講義:建設材料学基礎、コンクリート工学、コンクリート技術、工学実験1、RC構造デザイン実習、検査技術、メンテナンス工学、総合演習、耐久性力学(大学院)、材料科学概論(大学院)、都市環境デザイン工学基礎1(大学院)
■主な研究テーマ:
(1)コンクリート硬化時の体積変化に伴うひび割れ発生のメカニズム
(2)若材齢時のコンクリートの引張挙動に関する研究
(3)電磁波を用いた鉄筋コンクリート中の塩分量推定技術に関する研究

コンクリートの一生を考える

 コンクリート構造物は、これまでメンテナンスフリーと思われてきました。しかしながら、コンクリートは常に人の手を掛けていないと弱く脆いことが明らかとなってきています。硬化時の水和発熱によるひび割れや乾燥収縮ひび割れ、塩化物の浸透による鉄筋の腐食、火災によるコンクリートの崩壊等コンクリート構造物の寿命を縮める要因は多種多様であり、これらの原因を明らかにし、如何になくすかがコンクリートを長持ちさせる秘訣といえます。また、資源の有効利用や環境保全を前提とした材料開発も重要な課題といえます。

 当研究室では、コンクリートの収縮によるひぴ割れのメカニズムの解明やコンクリートの経年劣化の予測技術、非破壊によるコンクリート内部の診断技術、縮尺鉄筋による立体視等に関する研究を行っています。コンクリートに木の持つしなやかさ、通気性、組織の緻密さ、温かさを取り込み、日本の風土に合ったコンクリートを造っていくのが当研究室の目標です。

鋼構造研究室

内田 大介(Daisuke UCHIDA)教授 博士(工学)

■専門分野:鋼構造学、メンテナンス工学
■担当講義:構造力学1及演習、鋼構造デザイン、工学実験1、総合演習、物理1及演習、工業力学及演習、鋼構造の疲労(大学院)、都市環境デザイン工学基礎2(大学院)
■主な研究テーマ:
(1)グラインダー仕上げによる溶接継手の疲労強度改善効果
(2)腐食部材の耐力(引張、圧縮、曲げ、疲労)評価方法
(3)鋼製橋脚隅角部・補修部の疲労寿命評価法
(4)高力ボルト摩擦接合継手の耐力(すべり、降伏)評価

安全な橋を作り、守る

 現在大きな問題となっている地球温暖化防止対策のーつに、構造物の長寿命化があります。当研究室では、橋を中心に、鋼構造物の寿命を支配する劣化現象である金属疲労を主な対象として、疲労設計法、溶接継手の疲労強度とその改善法、疲労き裂の補修、既設構造物の耐力評価、橋梁のモニタリング、維持管理システムの合理化などについて研究しています。以下に最近取り組んでいる研究課題のいくつかを紹介します。

●ボルト締めストップホール法で補修した疲労損傷溶接継手部の疲労強度評価法:疲労亀裂の先端にストップホールと呼ばれる円孔を開けて、さらにそれを高力ボルトで締め付ける補修方法です。このような補修により、疲労損傷を受ける前よりもさらに高い疲労耐久性を実現できます。

●鋼桁橋梁の主桁・横桁交差部の疲労強度評価方法:この部位は、主桁からの力と横桁からの力が作用する2軸応力場になるとともに、せん断応力の影響で応力の作用方向が変化します。このような複雑な応力場での疲労強度評価法の確立を目指しています。

工夫を重ねて製作した2軸疲労試験機

溶接継手部の応力の流れ


構造解析研究室

山本 佳士(Yoshihito YAMAMOTO)教授 博士(工学)

■専門分野:構造工学、コンクリート構造、複合構造、計算工学、応用力学
■担当講義:物理1及演習、工業力学及演習、確率・統計、RC構造学及演習、RC構造デザイン実習、工学実験1、複合材料構造解析(大学院)
■主な研究テーマ:
(1)地震、衝撃、各種劣化作用を受ける鋼・コンクリート構造物の破壊シミュレーションモデルの開発
(2)メゾスケールシミュレーションによる新材料・構造技術の性能評価
(3)深層学習およびシミュレーションを利用した設計・施工・維持管理技術の生産性向上と高度化

計算工学による生産性向上とインフラ強靭化

 近年、社会インフラ構造物(運輸、エネルギー供給、利水・治水、防災等を目的とした公共構造物)の設計は、設計時の想定に対して安全であるだけでなく、想定を超える大きな作用を受けたとしても、例えば、一部に損傷が生じても復旧が容易であること、あるいは部材単体が破壊しても全体として機能を保つことなど、いわゆる復旧性や冗長性(リダンダンシー)で評価される、強靭さ(レジリエンス)の確保が重要な課題になってきています。本研究室では、強靭なインフラ実現のために、実験あるいは現状の解析技術では評価が難しい、復旧性、冗長性を評価可能な、各種作用(地震、衝撃、火災等)を受ける鋼・コンクリート構造物の破壊・崩壊シミュレーション手法の開発に取り組んでいます。さらに、開発した手法を用いた各種インフラ構造物の安全性・強靭性評価や劣化・破壊メカニズムの解明、新しい補強技術の開発などを行っています。

 一方、少子高齢化、労働人口減少への対策として、1人1人の生産性の向上が急務になっています。本研究室では、深層学習およびシミュレーションによる学習データの大量生成を応用した、インフラ構造の設計や維持管理技術の高度化・効率化に関する研究も行っています。

深層学習とシミュレーションの連携によるレーダ画像からの内部欠陥可視化