環境システム系の研究活動
本学科の環境システム系は、「陸水域環境研究室」「地震防災研究室」「水文気象環境研究室」の3研究室で構成されており、水工学、河川工学、地盤力学、土質力学、水文気象学、水文環境学などの研究分野で、それぞれ最先端の研究を行っています。
本学科の4年生は、全10研究室のいずれかの研究室に配属され、それぞれの研究室の教職員および大学院生とともに、大学4年間の集大成である「卒業研究」に着手します。卒業研究の成果は「卒業論文」としてまとめられ、毎年2月に行われる卒業論文審査会において、研究成果に関するプレゼンテーションおよび審査が行われます。また、特に優れた研究成果は、土木学会などの学協会が主催する対外的な学会で国内外に公表されています。
陸水域環境研究室
道奥 康治(Kohji MICHIOKU)教授 工学博士
(1)樹林化した河道における洪水流の観測・解析、河道内樹林の適正管理と空間デザイン
(2)汚濁浸出水の窒素除去技術、マイクロバブルを用いた貯水池の深層曝気
(3)石礫など自然材料を用いた河川構造物の水理デザイン
(4)河川改修に伴う河道地形の経年変化分析、湖沼・貯水地の水質・水理学
自然共生を実現するための持続的な川づくりと流域管理の戦略
適切な計画の下で河川の整備や管理を実施しないと、河川本来の流れや地形に不可逆的な変化を与え、水辺の景観や水質・生態系など自然環境を損ねることがあります。当研究室では、安全で自然との共生を実現するための持続的な川づくり、環境負荷を緩和・最小化するための流域管理の戦略について研究します。
様々なインフラの劣化と維持管理は、これからの最も重要な技術課題として注目されています。自然公物である河川は、人為的な管理・利用と気候変動の影響を受けて環境水理学的な特性が変動するため、経年的に劣化する人工構造物とは異なる管理概念が必要となります。水辺から流域に至るまでの様々な規模の空間を対象に川のデザイン戦略を考えていきます。
地震防災研究室
酒井 久和(Hisakazu SAKAI)教授 博士(工学)
(1)地震時の斜面の信頼性手法に関する研究
(2)地盤災害による道路の復旧期間・費用に関する研究
(3)継続時間の長い地震動に対する土構造物の耐震性評価に関する研究
(4)地盤災害における土砂流動域の検討
地震被害の軽減を目指して
我が国は地震活動期に入っていますが、国や地方公共団体は財政逼迫下にあり、防災対策の重点化が求められています。また、世界的にも多数の死傷者を出す地震が頻発していますが、対策の技術不足や財政事情により必ずしも地震防災対策が十分ではありません。
当研究室では、道路や水道等のライフラインの地震後の機能低下、堤防破壊による大都市部における大規模浸水等の複合災害などを、経済的、効果的に被害軽減することを目的として、1次スクリーニングとしての広域における危険箇所の抽出方法や詳細検討としての構造物の損傷や崩壊領域の評価手法の確立などの研究を行なっています。
水文気象環境研究室
鈴木 善晴(Yoshiharu SUZUKI)教授 博士(工学)
(1)集中豪雨などの降水現象の解明と工学・防災への応用
(2)温暖化や大気汚染を中心とした地球環境問題の影響評価
(3)土地利用や水文特性を考慮した適切な流域管理の実現
(4)江戸城外濠における水環境と水循環に関する観測・研究
環境問題の解決や気象災害の軽減を目指して
近年の地球温暖化や発展途上国の近代化等によって自然環境・地球環境が大きく変化し、集中豪雨による被害の多発や環境の酸性化など、我々を取り巻く都市の環境や気候もまた大きな影響を受けることが予想されます。当研究室では、このような地球環境の問題や気象災害の問題を対象に、その影響の予測や対策の検討を行っています。
特に最近は、大気中に物質を散布することで降水促進や豪雨抑制を目指すクラウド・シーディングに関する研究、地球温暖化の進行に伴う大気環境場や豪雨イベントの将来変化に関する研究、土地利用の変化が降水現象や熱環境・風環境に与える影響に関する研究などに力を入れています。また、江戸城外濠における水環境改善策の検討や東アジアにおける大気浮遊物質の越境汚染に関する研究など、「人類と自然環境がいかに共存するか」をテーマに、水工学(河川や水資源などを扱う学問)や水文学(水循環や水環境などを扱う学問)に関連する研究に取り組んでいます。